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最高裁判所第二小法廷 昭和22年(れ)187号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人小出安太郎の辯護人遠山丙市上告趣意第一點について

要するに論旨は、被告人小出安太郎に關する原判示第四の犯罪事実中その(二)と(三)とについては、原判決は、被告人の自白のみを證據として、知情の點、すなわち被告人は、その買受けた物件が盗品であることを知っていたという事実を認定したのであるから違法である、というのであるが、なるほど、この點の直接の證據は、被告人の自白のみではあるが、これら賣買の事実は、被告人の自白の外、賣主たる窃盗犯人小島重子に對する司法警察官の訊問調書、同じく賣主である窃盗犯人野沢晧の原審公判における供述が證據として引用せられているのみならず、さきに、(二)の事実よりわずか半月程前に、被告人が(一)の物件を買受けた際に、被告人は、賣主たる窃盗犯人森嘉之吉に對し、これは忍びか、たゝき品かと聞いたので、森は静岡の方の忍びだと告げたという事実は、原判決引用の森嘉之吉に對する司法警察官の訊問調書で、立證せられているところであり、原審はこれら諸般の證據を被告人の自白と綜合して、すなわち、如上諸般の證據を被告人の自白に對する補強證據として(二)および(三)の賣買についても、被告人は、その盗品であることを知っていたものと認定したのであって、所論のように、被告人の自白を唯一の證據として、これを認定したものでないことは原判文を檢討すれば、極めて明らかである。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

以上の理由により、刑事訴訟法第四百四十六條に從い、主文のように判決する。

右は全裁判官の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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